就労移行支援の利用を検討している方にとって、「本当に就職できるのか」という不安は誰もが抱くものです。障害や病気を抱えながらの就職活動は決して簡単ではありませんが、適切な支援を受けることで多くの方が一般就労を実現しています。
この記事では、就労移行支援の就職率の実態から、高い成果を上げる事業所の特徴、そして成功につながる選び方まで、データに基づいて詳しく解説します。
目次
就労移行支援の就職率は54.7%
まずは、就労移行支援の就職率について見ていきましょう。厚生労働省が公表している「就労支援施策の対象となる障害者数/地域の流れ」を参照します。
- 就労移行支援のサービス利用終了者数:約3.6万人
- 上記のうち一般就労した人数:15,675人
- 一般就労への移行者割合:58.8%
参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40524.html
就労移行支援を利用した方のうち、実に54.7%の方が一般就労を実現しています。また、就労移行支援の利用者数と一般就労への移行割合も年々増加しており、就労移行支援は一般就労を目指す上で十分意味があると言えると思います。
ハローワークを通じた精神障害者の就職率は43.09%
就労移行支援の効果を客観的に比較するために、ハローワークを通じた精神障害者の就職率と比較してみます。令和5年度のハローワークを通じた障害者の就職率は43.09%で、対前年度0.1ポイント増えています。
参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40951.html
支援方法別、一般就労者の割合
| 支援方法 | 就職率 |
| 就労移行支援 | 58.8% |
| ハローワーク | 43.09% |
こうしたデータから、一般就労者の割合は就労移行支援がハローワークより15%も高く、就労移行支援の障害特性に配慮した専門的な支援の効果が反映されていると考えています。
ちなみに、私たちが福岡市で就労移行支援事業所ディーキャリアを運営するタガイトにおける就職率は、2025年1月時点で62.4%となっており、全国平均を上回る実績を残しています。
就職率以外に注目すべき指標
先ほど就職率についてご紹介しましたが、大人の発達障害を抱える方の就労にとって就職率と同じくらい重要なのが「定着率」です。せっかく就職しても、すぐに退職してしまっては意味がありませんよね。
先ほども少し触れましたが、私たちタガイトの実績をお伝えすると、2025年1月時点で以下のような数字となっています。
- 就職実績:103人
- 就職率:62.4%
- 半年定着率:89.3%
- 退所者総数:165人
この数字から、10人中6人以上が就職を実現し、そのうち9割近くの方が半年以上継続して働いているということがわかります。特に定着率の高さは、仕事が長続きしない傾向がある発達障害や精神障害を抱える方としては非常に高い数字だと考えています。
これらの指標は他の就労移行支援事業所でも公開しているところもありますので、自分に合った事業所を探していらっしゃる方は参考にしてみてはいかがでしょうか。私たちも見学の際には、これらのデータや実際に通所する方の事例を丁寧にお伝えしています。
高い就職率を実現している就労移行支援事業所はどんなところ?
私たちが福岡で就労移行支援事業所を運営してきた経験から、高い就職率を実現している就労移行支援事業所には共通する特徴があると感じています。全国に約3,000ヶ所ある就労移行支援事業所の中でも、成果を上げている事業所には以下のような特徴があります。
- 専門スタッフが充実している
- プログラムの種類と個別対応の柔軟性
- 企業との繋がりと親身な就職支援
- 就職後も続くアフターフォロー体制
それぞれの要素について詳しく解説していきます。
専門スタッフが充実している
就労移行支援事業所では、発達障害や精神障害の特性を深く理解した多様な専門スタッフが配置されています。私たちディーキャリアでも、専門スタッフがお一人おひとりの利用者の方をサポートしています。
配置されている専門職の例
- 就労支援員:利用者の就職活動支援、企業開拓、定着支援
- 職業指導員:職業訓練、作業訓練の実施、ビジネスマナー指導
- 生活支援員:日常生活における相談対応、社会生活スキルの向上支援
- 精神保健福祉士:専門的な相談支援、関係機関との連携
- 臨床心理士/公認心理師:心理評価・カウンセリング、ストレスマネジメント指導
- サービス管理責任者:個別支援計画の監修、サービス品質管理
大人の発達障害や精神障害をお持ちの方にとって、「この人になら相談できる」「自分のことを理解してくれる」と感じられるスタッフがいるかどうかは、非常に重要なポイントだと考えています。
実際に利用者の方からよくお聞きするのは「事業所のスタッフが親身になってくれた」「専門知識を学べて、日常生活でも役に立った」といった声です。私たちも押し付けるような支援ではなく、その方に必要な公的支援も含めて総合的にアドバイスする姿勢を大切にしています。
プログラムの種類と個別対応の柔軟性
優秀な就労移行支援事業所では、画一的なプログラムではなく、お一人おひとりの障害特性や課題、ご希望に応じたオーダーメイドの支援を提供しています。これこそが高い就職率につながる重要な要素だと私たちは考えています。
私たちが運営するディーキャリア福岡赤坂オフィスとITエキスパート福岡大濠オフィスでの対応プログラムを参考としてご紹介します。
ディーキャリア福岡赤坂オフィス
- 自己理解プログラム、コミュニケーションスキル訓練
- ストレスマネジメント、セルフケア技法の習得
- 実際の職場を再現した環境での上司役スタッフとの業務報告練習
ディーキャリアITエキスパート福岡大濠オフィス
- IT未経験者向け、パソコンの基本的な操作からHTML、CSS、Officeなどを学べる
- IT経験者向け、プログラミング基礎から応用まで専門スキルを身につける
- 全員共通:特性への理解と向き合い方、上司や同僚など他者との接し方を学べる
利用者の方から「自分と向き合う時間が欲しいし、パソコンも学び直したい」という声も耳にします。
私たちはパソコンやITスキルを高めることを目的とした事業所においても「ITスキルがあればコミュニケーション不要」という誤解の解消に努めつつ、技術力とコミュニケーション力の両方を大切にした支援を心がけています。
実際に、プログラミングの知識はあるものの職場での振る舞いが原因で転職を繰り返していた方が、実践的な訓練を通じてコミュニケーションスキルを身につけ、現在は安定して就労されている方も多数いらっしゃいます。
企業との繋がりと親身な就職支援
就職率の高い事業所は、地域の企業との豊富なネットワークを持ち、利用者の方お一人おひとりに合った職場探しを親身になって行っています。私たちも福岡市内を中心に多くの企業様との連携を大切にしており、これが高い就職率につながっていると考えています。
企業連携の具体例
- 多様な求人情報の収集:利用者に向いている求人情報の提案
- 就職活動のサポート:実際の就職活動職場で役立つスキル指導
- 採用企業への理解促進:障害特性への配慮方法を丁寧に説明
私たちの事業所では、「かかりつけの病院」「自立支援」からご紹介をいただいた方の通所も多く、福岡の地域に根ざした支援を行っています。また、企業の方々にもパンフレットをお渡しするなど、障害者雇用への理解を深めていただく活動も継続的に行っています。
求人情報をただお渡しするだけでなく、「なぜその職場を選ぶのか」「ご自身の特性とその職場環境は合っているか」「困った時にどのように対処するか」といったことについても、利用者の方と一緒にじっくりと考えることを大切にしています。
就職後も続くアフターフォロー体制
就職はゴールではなく、その後の定着支援まで見据えた体制が重要です。
定着に向けた取り組みを積極的に行なっている事業所こそが、結果的に高い就職率と定着率を実現するはずと私たちは考えています。
定着支援の具体的内容
- 就職後6ヶ月間の継続支援:定期的な職場訪問、面談、相談対応
- 企業との連携:配慮事項の調整、課題解決のサポート
- 利用者のメンタルサポート:働き続けるための心理的支援
- 緊急時の対応:トラブル発生時の即座の支援
私たちタガイトでは89.3%という高い半年定着率を実現していますが、これは就職後も継続的なフォローアップを行い、「安心して長く働き続けられる職場」への就職を重視しているからです。
転職を繰り返してしまう方の多くは、自分の特性を理解していなかったり、職場での困りごとを一人で抱え込んでしまったりすることも原因のひとつです。私たちは支援の過程で特性把握と対処法を身につけ、就職後も長期に渡り継続的にサポートすることで、長期的な職場定着につながると考えています。
これらの特徴を持つ事業所を選ぶことで、単に就職するだけでなく、長期的に安定して働き続けることが可能になるはずです。
メンタルヘルス課題を抱える方の就職成功のポイント
メンタルヘルス課題を抱える方の就職においては、一般的な就職活動とは異なる配慮や支援が必要だと感じています。ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)、うつ病、適応障害、双極性障害などの特性をお持ちの方が安定して働き続けるために、どのような支援が効果的なのでしょうか。
私たちが福岡でディーキャリアを運営してきた経験から、特に重要だと感じる4つのポイントについて詳しくお話しします。
うつ病からの職場復帰を目指す方の特徴的な支援内容
うつ病や適応障害を経験された方の就職支援では、体調管理と自己理解が重要な要素になると考えています。
うつ病・適応障害の方向けの支援プログラム例
- 体調管理スキルの習得:睡眠リズムや体調の自覚などのサポート
- ストレス耐性の向上:職場での様々なシーンに合わせた向き合い方の指導
- 段階的な負荷調整:ひとりひとりの体調に合わせた訓練内容の細やかな調整
- 報告・相談の体験:実際の職場を模した報告や相談を再現した実習
実際に私たちの事業所には、「精神障害から復職したい」「働くためのコミュニケーションスキルを身に付けたい」といった具体的な目的を持った方も多くいらっしゃいます。こうした明確な目標をお持ちになれれば、より就職につながりやすい傾向があると感じています。
また、「うつ病でも支援を受けていいでしょうか」「適応障害があっても通えますか」といったお問い合わせを頂くことが多いのですが、精神疾患のある方ももちろん通えます。就労移行支援事業所には精神障害をお持ちの方への理解と支援実績を持つスタッフがいますので、自身の特性に合わせたサポートを受けることができます。
発達障害(ASD・ADHD)の方向けの独自プログラム
発達障害をお持ちの方の就職成功には、自己特性の理解と環境調整が不可欠です。特性は個人差が大きいため、画一的な支援ではなく、その方に合わせたオーダーメイドの支援が重要になってきます。
発達障害特性に応じた支援内容
ASD(自閉スペクトラム症)の方向け
- 構造化された環境づくり:明確なルールとスケジュールの提示
- 感覚過敏への対応:聴覚過敏、触覚過敏への具体的な配慮
- 社会的コミュニケーション訓練:暗黙のルールを明文化した指導
ADHD(注意欠如・多動症)の方向け
- 注意集中力の向上訓練:マルチタスク対策、優先順位の付け方
- 衝動性のコントロール:感情調整、行動制御スキルの練習
- 時間管理能力の向上:スケジュール管理、締切管理の具体的手法
例えば、「マルチタスクが苦手で電話しながらメモが取れない」という特性のある方には、「電話は録音しておいて、終わった後に録音を聞いてメモを残す」といった具体的な対処法を学ぶと同時に、就職を希望する企業側にも共有し、働きやすい環境を整備していきます。
このような個別の配慮を受けられることが就労移行支援事業所の特徴であり、本来お持ちの能力を十分に発揮していただけるはずです。
コミュニケーションスキル向上のための具体的な取り組み
その他の方含め、メンタルヘルス課題を抱える方の多くが苦手とするのが、職場でのコミュニケーションです。私たちの事業所でも、この点について悩まれている方が非常に多くいらっしゃいます。
コミュニケーション訓練の内容
- 基本的なビジネスマナー:挨拶、報告・連絡・相談の仕方
- アサーティブコミュニケーション:自分と相手を尊重する伝え方
- 職場での人間関係構築:同僚との適切な距離感の保ち方
- 困った時の相談方法:上司への相談タイミングと具体的な方法
例えば私たちディーキャリアITエキスパート福岡大濠オフィスでは、「パソコンを使ってコミュニケーションを取ったり、Slackを使ったやり取り」など、最近の働き方に即したツールを活用したコミュニケーション訓練も行っています。テレワークやリモートワークが増えている現代の働き方に沿った実践的なスキルを身につけていただけるはずです。
実際に利用者の方からは「実際の職場で使われているツールで練習できるので安心感がある」「コミュニケーションが苦手だったが、段階的に練習できて自信がついた」といった声をお聞きしています。
ストレスマネジメントとセルフケアの習得
長期的な就職定着のためには、ご自身でストレスを管理し、メンタルヘルスを維持する能力が必要です。これはメンタルヘルス課題をお持ちの方にとって、特に重要なスキルになります。
セルフケアプログラムの具体例
- ストレス認識スキル:自分のストレスサインの早期発見
- リラクゼーション技法:深呼吸、筋弛緩法、マインドフルネスの実践
- リフレーミング:考え方やものの見方の転換技法
- ライフワークバランス:仕事と私生活の適切なバランス調整
これらを踏まえて、例えば実際に私たちの事業所では、以下のようなイベントを定期的に開催しています。
- 7月15日(火)開催:パソコン個別
- 要予約:13:00〜14:30
- プロゲートという学習ツールを使って、サイト作成をするためのプログラミングの練習をしてみよう、という体験になります。HTML&CSSやJavascriptを最初は体験してもらいます。
- 8月18日(火):アンガーマネジメント
- 要予約:13:00〜14:30
- 怒りの感情はコントロールするのが難しいく、後悔しやすい人に向けて、コントロール方法を皆で学んでいます。日常の中の実際にあった体験をもとに、怒りのコントロール方法を利用者全員でディスカッションをします。
- 9月20日(火):悩み事相談(就職や特性について)
- 要予約:13:00〜14:30
- 就職に対しての不安事や悩み事、あるいは自分の障害特性からくる日常の困り事や生きづらさについて、専門のスタッフがご相談に乗ります。堅苦しいものではなく、雑談しながら気楽に話しましょう。
無料トレーニングのお申し込みは以下のメール or お電話にて、お気軽にお申し込みください!
メールアドレス:it-fukuokaohori@dd-career.com
お電話:092-401-0088
受付時間:10:00〜18:00(土日祝休み)
担当:江口
こうした支援などを通じて、私たちの考え方である「長く働き続けるコツは、自分を知り、特性を活かすこと」を学んでいただき、持続可能な就労を目指しています。
メンタルヘルス課題をお持ちの方でも、適切な支援を受けることで安定した職業生活を送ることが十分に可能です。一人で悩まずに、まずはお気軽にご相談いただければと思います。
まとめ
この記事を通じてお伝えしたかったのは、「就労移行支援は意味がない」という声の多くは誤解に基づいている様に感じるということです。確かに、大人の発達障害を抱えている方でも、すぐに就職したい方や既に十分なスキルをお持ちの場合には向いていないかもしれません。しかし、自分の特性を理解し、長期的に安定して働きたいと考えている方にとって、就労移行支援は非常に価値のあるサービスだと確信しています。
支援期間の重要性
「時間がかかりすぎる」と感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、この期間こそが就労移行支援の最大の価値です。急いで就職するのではなく、自分に合った働き方を見つけ職場で困った時の対処法を身につけることで、長期的な職場定着が可能になります。
私たちタガイトの89.3%という半年定着率(2025年1月時点)は、この支援期間の重要性を示していると考えています。
継続就労のための効果的支援
就労移行支援の本当の目的は「就職すること」ではなくその人らしく働き続けること。自己理解を深め、コミュニケーションスキルを身につけ、自分に合った職場環境を見つけることで、単なる就職ではない「継続可能な就労」の実現に向かいます。
発達障害や精神障害の特性をお持ちの方が、特性を活かしながら安心して働ける環境を見つけることこそが、就労移行支援が提供する最大の価値だと考えています。
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